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工業会の概要

写真が上達するコツ
第1回 写真で伝えたいことを決めよう

上手な写真を撮る上でもっとも大切なこととはなんでしょう。それは、その写真で「 伝えたいこと 」がなんなのかをはっきりさせることです。「 写真が上達するコツ 」第1回目は、写真で伝えたいことを決める方法と、その効果的な手段について紹介します。

■ 写真の良し悪しはテクニックではない

「 高価な機材を買ったり構図などのテクニックを学んでも、人を魅了する写真が撮れないのはなぜ? 」

これは、筆者が写真セミナーやワークショップで講師をしているときに、たまに受講生の方からうける質問です。こうした質問をする方は決して撮影が下手なわけではありません。下手どころか、とても高価なカメラをお持ちだし、テクニックも人並み以上ですから、撮った写真を一見するととても上手に見えます。しかし、その写真には大きな欠点があるのです。それは……。

「 伝えたいことがない写真 」なのです。

▼写真1

綺麗な写真を撮りたかっただけで、
何を伝えたいのかを考えていない写真
 

異論もあるかもしれませんが、写真でもっとも大切なことは「 伝えたいことが伝わる 」ことです。もちろん、作品を観る人によって異なる感じ方をするでしょうから、作者の意図が正確に伝わらないことは多々あります。それでも作品に作者の気持ちが込められているかそうでないかは、その作品の良し悪しに大きな影響を与えるのです。ここで勘違いしないでいただきたいのが、良い写真を撮りたいという気持ちと、写真で何かを伝えたいという気持ちは別のものだということです。大切なのは、見た目に良い写真を撮ることではなく、テクニックは未熟でもいいので、写真に伝えたい気持ちを込めることなのです。伝えたいことが決まっていれば、テクニックは後からいくらでも高めることができるからです。

では、伝えたいことがない写真とはどんなものでしょうか。写真1を観てください。高価なレンズと最新のカメラ、そして最新の機能を駆使して撮った都会の夜景写真です。光と影のコントラストで、煌びやかな都会の夜を表現できているかもしれません。しかし、この写真を観る人は、ただ「 綺麗 」と感じるだけでそこで終わってしまうことでしょう。それ以上、何もないのです。実際、撮った本人( 筆者 )も、カメラの最新機能を試してみたいという気持ちだけで、この風景の何を誰に伝えたいかなど、何ひとつも考えていませんでした。

■ 伝えたいことと主題を決める

▼写真2

画の中に情報がたくさん詰め込まれすぎて
伝えたいことがわかりにくくなって
しまった写真
 
▼写真3

主題を自転車に決め、寄って撮影。
他の情報をフレームアウトさせて
伝えたいことを明確にした
 

伝えたいことってなんだろう? と思う方もいることでしょう。これは掘り下げると難しくなってしまうので、とりあえずは「 被写体を観て感じたこと 」だと思ってください。美しいもの観たとき、自分はどう美しいと感じたのか、激しいものを観たとき、どう激しいと感じたのか、それら自身で感じたことを自身の解釈で構わないので、写真で他の人に伝えることを考えてください。具体的な方法を紹介しましょう。

写真2を観てください。晩秋の都会の歩道における風景のスナップです。このままでは写真1と同様に何も伝わらない写真ですので、ここで何かを伝えられるスナップ写真にしてみましょう。まず、写真2の場所に立ったときに感じたことを言葉にします。筆者が感じたことは「 晩秋の都会のもの哀しさ 」でした。これを「 伝えたいこと=テーマ 」にします。次に、このテーマを表現するための主役の被写体を決めます。つまりテーマを表現するための「 主題 」を決めるわけです。写真2の場所で主題になり得る被写体は、自転車、歩道、落ち葉など、撮りかた次第ではどれもが主題になりますが、ここでは「 自転車 」に決めました。その大きな理由は、放置された自転車は、「 そこにいない人の存在を想像させる 」からです。いない人を想像させる自転車は、もの哀しさを表現する主役になり得ると考えたわけです。もうひとつ、直線の多い風景の中で唯一「 円 」のある被写体が自転車( 車輪 )だったからという理由もあります。これは、直線だけで構成されると単調になりがちな写真に、車輪が大きなアクセントになるだろうと考えたからです。

こうして撮ったのが写真3です。写真2と比べると、明らかに伝えたいことが明確になっていると感じるはずです。2つの写真の印象がどうしてここまで変わるのかの詳細は本稿の最後に譲りますが、ひとつだけ説明すると、観る人の目をどこに落ち着かせるのかを考えて画作りしているからです。

■ 主題を引き立てる要素(副題)を取り入れる

▼写真4

テーマが複雑な場合
主題だけでは伝わりにくいことがある
 
▼写真5

副題を取り入れることで主題に込めたテーマが
より浮き立つようにもなる
 

写真4を観てもらいましょう。百戦錬磨の老ノラ猫のモノクロ写真です。ノラの積んできただろうケンカの経歴と、老いた今の哀切を伝えたかったのですが、もうひとつ何かが足りません。強者の経歴と老いた哀切という、相対的な、でも共存させたいテーマを伝えるためには、写真4のように主題である老ノラ猫自身だけでは少し難しいと感じたので、主役( 主題 )を引き立てる名脇役、つまり「 副題 」を取り入れることにしました。

それが写真5です。老ノラ猫の背後に、背を向けて歩いて行く小学生の列をぼかして写し込んでいます。このとき、老ノラ猫( 主題 )に対して、この子供の列が「 主題 」を引き立てる「 副題 」となります。老ノラ猫は子供たちに無関心ですが、子供たちも猫にまったく無関心。このノラが幼く可愛い子猫だったら、子供たちは無関心ではいられないでしょう。こうした「 無関心 」を画の中に取り入れることで、「 老いの哀切 」を表現してみました。さらに、老ノラ猫の目線と子供たちの歩いて行く方向を真逆にしたことで、「 哀切 」感が深まっていると思います。もし双方の「 線 」が同じ方向だとすると、こうした効果が弱まってしまうはずです。

このように、伝えたいテーマが複雑で「 主題 」だけでは伝えきれないときは、「 副題 」を積極的に写し込んでみましょう。ただ、表現方法として少し難しくなるので、馴れないうちは単純なテーマで「 主題 」だけで表現する練習をしましょう。

■ 伝えたいことを上手に表現する手段「 フレーミング 」

▼写真6

構図は悪くないが、 今ひとつ伝えたいことが
伝わりにくい写真の例
 
▼写真7

雪路を歩く人物の足の裏が見える位置まで
カメラポジションを思い切り下げる。
画に入れる情報を極限まで省略しても、
写真6の状況は説明できる
 

第1回目の最後は「 フレーミング 」です。「 構図 」とも呼びます。フレーミングは写真上達にとって、とても重要なテクニックです。はっきり言ってフレーミングが上手だと、他の写真のテクニックが未熟でも、たとえスマートフォンのカメラだとしても、魅力的な写真が撮れます。もちろん、いくらフレーミングが上手でも、伝えたいことが明確でなければそれは宝の持ち腐れになることは忘れないでください。あくまでもフレーミングなどの撮影技術は、伝えたいことを上手に表現するための手段でしかないのですから。

フレーミングにはたくさんの考えかたやその種類があり、それらをすべて限られた場所で紹介することはできませんが、基本的な考えかたは覚えておいてください。それは、フレーミングは写真を観る人の視点を、見せたいところに誘導するためのもの、また、写真から受ける印象を決定づけるものだということです。詳しく紹介するのは次回に譲り、ここでは、主題を引き立てるための「省略のフレーミング」についてだけ紹介しましょう。まずは写真6を観てください。

雪路で犬を散歩させる人物の後ろ姿を納めた一枚です。これで一通り完成形ではあるのですが、これも今まで紹介した写真と同様に、少しインパクトと訴求力に欠ける写真です。詳しく解説すると、この写真を観る人の視点の落ち着きどころがないのです。つまり人物の後ろ姿、特に脚で落ち着くのか、連れている犬に落ち着くのか。多分、観る人の視点は人物、犬の双方の間を何度も往復して、結果どこにも落ち着かないのではないでしょうか。こういった、観る人の視点が落ち着かない写真は( すべてとは言いませんが )、あまり良い写真だとは言えません。( 主題となる被写体が2つ以上存在する写真の場合は別 )

では次に写真7を観てください。今度はとても大胆に、人物の脚だけをクローズアップしてみました。また、犬は人物の前方に配置し、少しボケさせています。写真7の場合、観る人の視点の落ち着きどころは人物の右脚、それもブーツのソールではないでしょうか。これだけ大胆なフレーミングでも、写真6の状況は十分に説明されているはずです。こうした「 省略のフレーミング 」は、写真を印象付ける基本的なフレーミング・テクニックで、とても重要なテクニックなので覚えておいてください。前出の写真3も、写真2から余計なものを省略したフレーミングによって、主題を大きく印象付けているはずです。省略のフレーミングで大切なことは、余計だと思われるものを排除しても、被写体( 主題 )が置かれている状況や場所など、伝えたいことに必要な背景が想像できるようにすることです。

写真を上達させるために、ライティングや露光テクニックの習得も欠かせないものですが、今回紹介した写真で伝えたいことを表現するための俳優達である主題と副題、そして俳優達が演技する舞台を効果的に切り取るフレーミングの基本こそ、なによりも大切なものです。これらのことをしっかりと押さえて撮影する練習を積むことが、写真上達の王道です。

著者:薮田 織也( Oliya T. Yabuta )

■ 人物・光景写真家 ■  テレビ番組制作会社、コンピュータ周辺機器メーカーの製品企画と広告制作担当を経て、ライター兼人物写真家に。初心者にわかりやすい解説が得意。 2003 年から StudioGraphics on the Web の創設メンバーとして活動。現在は八王子に住み、光景写真と人物写真を撮りながら、写真のセミナー活動と著作に専念している。

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